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「煙が目にしみる」

 高校演劇の三重県大会。今日が第一日です。5校の作品を観劇。鈴鹿市民会館にて。近鉄電車を乗り継いでやって来ました。鈴鹿市に来たのは初めてです。高校生たちが喋っている言葉は、明らかに名古屋弁とは別種のイントネーション。例えば「終わって」を、名古屋だとフラットに発音しますが、三重県の人々はアタマの「お」にアクセントがある。ざっくり括ると、ここはもう関西文化圏なんですね。隣県なのにゼンゼンちがう。おもしろいなー。

 桑名西高校の「煙が目にしみる」。いろいろな部員がいますねー。男子も女子も、いろいろな顔があり、いろいろな声がある。豊かです。帰りの電車で部員たちを見かけました。男子がみんな私より小柄で驚きました。みんな舞台では大きく見えたんですよ。惜しいのは2点かな。長椅子が2脚とも客席と平行に置かれていました。これはちょっと斜めに置くのが私の好み。大人数のシーンで、フォーカスの当たる人物がセンターに来る傾向があります。これも上下に振るのが私の好み。注文はそれだけです。見事な上演に拍手拍手。群馬の全国大会で観た作品のなかに、仮にこの作品が混じっていてもなんら遜色はないですよ。

 青島幸男みたいな、あのお婆ちゃんが効いています。認知症気味のお婆ちゃんだけが、幽霊の姿を見ることができるし、幽霊の声を聞き取ることができる。あちらの世界に通じている。それ自体は特に珍しい設定ではないかもしれないけど、やっぱりそれが効いています。

 認知症のお年寄りって、記憶や能力が次第に失われていく。数字に例えると、100だったものが、だんだん数字が減っていって、最期はゼロになる。そういうものだと私は思っていました。悲しくて、哀れなことだ。でもそうじゃないのかもしれない。100が70になった人は、すでにあちらの世界に30行っているのだ。あちらとこちらで足して100。失われてもいないし、減ってもいない。少しずつ数字が渡っていき、こちらでゼロになったとき、あちらで100になるのだ。これは客席で私が勝手に思ったことです。作り手のねらいとはズレていると思う。でも私は客席ですごく優しい気持ちになり、なぜだか泣けて仕方がありませんでした。

 資料を見ると、桑名西高校は過去5年間で3回中部大会に進んでいるそうです。県下指折りの優秀な演劇部なのだ。今年も中部大会は固いんじゃないのかな。来年は三重県で全国大会が行われます。開催県の1位校は、ブロック大会を経ないで全国大会に進めます。桑名西高校、ひょっとしたら来年の全国大会出場、早々と決めちゃうかもね。(はやし)
by futohen | 2008-08-24 00:38 | 演劇一般