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「時をかける少女」を考える

 (映画の内容に触れています。ご注意ください)

 劇場版アニメの「時をかける少女」を見ました。DVDを返しに行ったその足で、本屋さんで筒井康隆の原作を5分間でレビュー。うん。やっぱりそうだ。なるほどな。このアニメはなかなかいいです。なにせ脚本がいい。大筋は原作と同じなんだけど、ドラマ作りの道具立てはゼンゼン違うのね。原作からがらっと変えている。そしてそれが概ねいいのです。そういえばアニメにはラベンダーの「ラ」の字も出てきません。びっくりでしょ?

 この作品は「時をかける少女」でありながら「時をかける少女」ではない。原作の主人公は「芳山和子」。アニメの主人公は「紺野真琴」。性格もゼンゼン違うし、私は名前を変えたんだと思いました。そうしたらそうじゃないのね。アニメにも「芳山和子」が登場する。なんと主人公のおばなのです。真琴は和子の姪なんですね。かつての「時をかける少女」は、いまや落ち着きのある中年女性となり、「時をかける姪」をあたたかく見つめるのだ。脚本、考えたなぁ。ちょっと「男はつらいよ」に似ているね。寅次郎と満男の関係。

 放課後、時間を持て余して野球をしている彼ら。そんな女子高生いない、という意見もありますが、私にはリアルに感じられました。だって私もよくやったもの。近所のグラウンドに集まって。人生でいちばんキャッチボールをしたのは高校時代だ。この、時間を持て余している感じ。そしてとっても狭い世界に生きている感じ。ぐっと来ます。ああ、高校生だなぁと思う。

 この作品は、彼らの生活圏から一歩も外に出ません。そして描かれるのは夏の、たった一日の出来事だ(ま、その一日を何度も繰り返すのですが)。この、彼らのスモールワールドぶりが、見ていてたまらなかったです。ワンダフル。ワンダフル・スモール。最近の劇場アニメって、やたらスケールのでかいのが多そうでしょ? そんななかで、この小ささです。

 ネット上で、この作品の感想を拾ってみました。絶賛している人も多ければ、酷評している人も多い。欠点として指摘されているのは、私がまとめるに以下の4点です。

 1.作品がアニメおたくに媚びている。作りがあざとい。
 2.主人公が自己中心的すぎる。性格が悪い。感情移入できない。
 3.ストーリーがご都合主義的。辻褄が合わない。納得できない。
 4.ラストが原作とちがう。

 このそれぞれについて、私の思うところを書こうと思います。つづく。(はやし)
by futohen | 2007-05-17 15:57 | 表現活動一般