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クロムモリブデン「ボーグを脱げ!」その3

 開演して最初に登場する俳優が、なかなかの男前なのでした。古尾谷雅人みたいな感じでね。なにかありそうな感じのする、そんな顔だ。(古尾谷雅人って自殺したんでしたっけ?)

 彼はたぶん私と同世代ではないかと思います。私は開演して早々、この人はこんな顔をしてこの歳までどんな人生を歩んできたのだろう、と。その俳優の人生に思いを馳せました。いい顔だなぁ。そういう、なにかを考えさせる顔って、小劇場ではなかなか見られないですよ。つるんとしたきれいな顔の持ち主なら大勢いますけどね。

 クロムモリブデンのウェブを見てみると、作・演出をなさった方が、やはり彼の顔に言及していました。そう、そうなんです。言及したくなる顔なんだ。演出家の曰く「女房を殺してきました、といった感じの顔」とのこと。なるほどな。あの顔をそう読みますか。ちなみにウェブをご覧になった方、写真で見るより、舞台で見る方が彼はずっといいですよ。失礼ながら、あまり写真写りのいいタイプではないようで・・・、残念!

 その彼が、開演してまだ間もないシーンで、「剣道のメン」をかぶってしまいます。

 あれは静かな衝撃です。顔が見えなくなるんですよ。まったく。舞台には客席側の天井から斜めに照明が当たりますから、メンをかぶると顔が完全に影になってしまう。覆面状態。もったいないよ。メンなんて脱げばいいのに。早く脱ぎなよ。

 ああいうのは観客にとってちょっとしたストレスですね。もどかしい。ストレスになるんだという発見と、ストレスを感じている自分が私にはおもしろかった。

 ボーグを脱げ!

 と。まさしくタイトルの通りに、私は内心で叫んで(?)いたのである。くどいですが、まだ開演早々のことですよ。これには、してやられた。「早く脱ぎなよ!」だなんてね。かつていちどだって男に向かっては願ったことのない私であるが。

 この話、まだつづきます。忘れられないシーンがこのあとあるのだ。(はやし)
by futohen | 2005-08-15 23:24 | 演劇一般