人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「老人ホームひまわり園」その2

 「ウチ」に目が向くとか、「ソト」に目が向くとか、ちょっとわかりにくかったですね。

 「なんであんなこと言っちゃったんだろう・・・」とか「素直になれない自分」とか。そういうのに浸っているのって、じつはヒロイックで気持ちいいんですよね。そういう感情で、登場人物と観客が「共感」するなら、劇場全体が気持ちよくなる。それはそれで、演劇のひとつの喜びです。それを否定するつもりはない。けれど「老人ホームひまわり園」から私が受け取った喜びは、そういう種類のものではありません。

 この作品でも、たとえば実習中の大学生が聞き分けの悪い入居者に思わず悪態をついてしまって、そのことを職員が注意するシーンとか。注意した職員が、自分の物言いが厳しかったのではないか、と上司に相談するシーンとか。自分の「ウチ」に目が向くシーンは、もちろんあります。あるのです。

 あるのですけれども。老人ホームの日々、彼らのすごす現実は重く、あわただしく、そんな「ウチ」の感情に浸っている余裕はなく、彼らはその流れに押し流され、押し流されながら現実との折り合いをつけていく。物語はその様子が描かれています。浸っているヒマがないんですよね。

 この「老人ホームひまわり園」を、私なりに整理してみると。

 第一部 入居者たちの、軽くはない現実。それをユーモアたっぷりに描く。
 第二部 入居者たちの、つかのまの夢。それを軽やかに描く。
 第三部 そして現実に戻る。老人ホームの終わらない日々。それをあっさりと描く。

 以上。この60分間の作品は、三部構成のトリロジー(?)になっていると思うのです。

 さぁ、興が乗ってきましたよ。この話はまだまだつづく。(はやし)
by futohen | 2005-07-16 20:32 | 演劇一般