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千葉日大一「青春デンデケデケデケ」

 芦原すなおの小説も、大林宣彦の映画も私は大好き。有名な作品ですよね。舞台で観るのは、私は初めてでした。60分間がなにせ楽しい。登場人物たちがという以上に、演じている出演者たちが楽しそうだったのが印象的です。序盤から笑いがとれる。演奏シーンでは手拍子が鳴る。登場人物たちの仲がいいだけじゃなく、作品と観客、舞台と客席も仲がよかったです。友好的な関係を作ることができた。その点で、この作品は他より一歩優れていました。

 シーンの転換も処理がきれいでした。完全には暗転してしまわずに、むしろ転換している様子を見せる。あれは相当練習したんでしょう。場転のBGMとしてその都度、当時のロックを流すのも、楽しい。転換要員も大勢いましたね。部員が増えたんだなぁ。

 私は以前にいちど、千葉日大一の作品を観たことがあります。去年1月の、船橋のフェスティバルでした。私の目当ては薬園台(の国語算数理科社会)でしたが、千葉日大一のことも覚えています。パンフを引っ張り出してみました。このときは男子部員はいなかったようですね。当時の1年生がいまはもう3年生。今回のメンバーのなかに当時の名前は見当たりません。代替わりしたのね。そうかぁ。去年の1月なんて、私には先週とか先月とかのことのようなのに。高校生に流れる時間はアレグロ(?)。私に流れる時間はアダージョ(?)。

 審査員の方々は「ホンがいい」「いいホンを選んだ」と口々におっしゃいました。私は逆で、むしろホンにこそ「伸びしろ」があるように思います。本来はもっと長い話を、60分に刈り込んだのでしょう。まだ、どこか「ダイジェスト版」の印象を拭えません。メンバーの恋愛や先生の不幸などのエピソードが、あっさりなぞられて、葛藤をもたらしていない気がします。楽器を入手することの苦労とかも、語られたら楽しいだろうなぁと思う(←「スウィング・ガールズ」みたいになっちゃうかもしれないね)。ただ、この「あっさり感」が、長所でもあるのですが。

 今回の大会は、重いテーマを扱った作品が多かったです。沖縄戦、核戦争、環境破壊、両親の不和・離婚・再婚、HIV感染、視覚障害、不登校、etc.神奈川大会でも人肉食、集団自殺、性同一性障害、いじめ問題などが扱われていました。ずっしりと重い。重いオンパレードです。そんななかにあって「青春デンデケデケデケ」は、すかっと明るく楽しく、痛快、というか軽快な印象がありました。うん。やっぱりこれがいいんだ。(はやし)
by futohen | 2006-11-28 01:08 | 演劇一般