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燃えろ 国立劇場の夏

 全国大会の優秀校の東京公演。もちろん高校演劇です。今日明日と2日間に分けて行われる、初日を観劇しました。会場は半蔵門の国立劇場です。いやぁおもしろい!

 いま「もちろん高校演劇です」と書きましたが、それは正確じゃなかった。高校の文化連盟が主催する催しでして、演劇部門のほかにも「日本音楽」と「郷土芸能」の部門があります。演劇だけじゃないわけ。午後1時から6時まで、各部門の優秀校がしのぎを削る充実のラインアップです。観客は推定1000人。満席でした。それでも「日本音楽」と「伝統芸能」の上演が終わったら、3割ぐらいは帰ってしまった。これから演劇なのに・・・。完全演劇目当ての私としてはショックだったな。あれは。おかげでいい席に移れたんだけど。

 で。誤解を恐れずに言うと、今日の演目のなかで私がもっとも感銘を受けたのは、日本音楽でも郷土芸能でも、演劇でさえもなかったです。プログラムのいちばん最初、午後1時すぎに始まって10分ほどで終わってしまったけど、すごかったのがあの「書道」!八王子実践中学高校の書道部による、「書道」の上演です。なんやねん、それ。って、思うでしょ? これがねー、言ってみりゃ演劇仕立てでもあって、とっても見ごたえがありました。

 最初はセリフの応酬なのです。浴衣姿の女子部員たちの、これが元気のいい掛け合いで。演劇部員かと思いました。というか、演劇だと思っていた。やがて「きゃー、ドウテイ」とかってきゃーきゃー言って、高村光太郎の「道程」を朗読する。で、書道だ。彼女たちがみな太い筆と、墨汁の入ったバケツ(?)を持って出る。舞台一面に広げられたでっかい半紙に書いていくのです。「道程」を。「あ、そうか、これ書道なんだ」って、このとき私は気がついた。

 でっかい白いジュウタンを敷いたような。そんな白い舞台の奥に、浴衣姿で横一列に並ぶ。ひとり一行ずつ。いっせいに書きはじめる。一文字ずつ筆をさばきながら、ゆっくりとこちらに進んできます。後ろ向きで、客席にお尻を見せて。なんだか田植えをしているようでもあります。

 1行ごとに、もちろん書く言葉がちがいます。なので少しずつ進みにズレが出るわけですよ。速い人と遅い人とがいる。でもみんな真剣だ。カメラが向こう側に回りこんで、彼女たちの表情を捕らえ、それが舞台奥のホリゾント幕に映し出されます。そしてBGMとしてパッヘルベルのカノンがずっと流れている。最後、半紙が吊り上げられ、書き上げられた「道程」の詩が客席に向けて掲げられます。一行ごとに味わいの異なる、でも堂々としたいい字だ。

 うーん、もうねー、なんだかねー、見ていて泣いちゃいそうなほどに感動したんだなぁ。なんででしょうね。そういうアート系のパフォーマンスを以前、私もいろいろやっていて、でも「書道」ってのは思いつかなかったです。すごい。今日のピカいちでした!(はやし)
by futohen | 2006-08-26 20:36 | 演劇一般